春先のよく晴れた日の朝、
愛犬とともに息子の門出を見送る
春は旅立ちの季節。
進学や就職で次々と子どもたちは巣立っていき、ついに末っ子もこの家を出て一人暮らしを始めることになった。引っ越し荷物を整え、今まさに家を出ようとしたとき、相棒だった愛犬が玄関のタタキの上に座り込む。
ここ数日、愛犬の様子がいつもと違った。息子の独立を前にそわそわする家族の様子から、ただならぬ気配を感じとったようだ。最愛の息子がいなくなることを早くも察知したのか、毎晩、息子の布団にもぐり込む。まるで別れを惜しむかのように。
息子と愛犬は兄弟のようだった。まだ幼かった息子は愛犬といつも一緒に遊び転げ、疲れたら背中を突き合わせて眠りについた。春は花見に行ったし、夏は庭で水浴びもした。秋は落ち葉を蹴散らかしながら散歩し、冬は雪合戦を繰り広げた。野球の試合で負けて悔し涙を流す息子を愛犬は励まし、試験の合格を聞いて喜ぶ家族のそばで大きく尻尾を振っていたこともあった。末っ子の息子にとって愛犬は大切な相棒であり、かけがえのない弟なのだ。
片時も離れなかった息子と愛犬だけど、今日から別々に暮らす。愛犬の頭を撫でながら、「またすぐ帰ってくるからさ」と話しかける息子。見上げる愛犬の瞳が少し潤んで見えたのは、私の涙のせいかな。
大丈夫よ、きっとちょくちょく帰ってくるよ。だって、息子にとってこの家が一番いいはずだから――。
息子を見送る愛犬に語り掛ける。これからは私たち夫婦との静かな暮らしが始まるよ。これまで以上に、のんびり楽しくやっていこうね。
―――今年、初めての三連休。家の前で止まるバイクの音を聞きつけ、愛犬は一目散に玄関へと駆けていく。そして、尻尾をぶんぶん振りながら、玄関ドアが開くのを今か今かと待ちわびる。
「ただいま~。おお、会いたかったぞ~」
おかえり。ほらね、すぐに帰って来たでしょう。
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