いつか猫と暮らす日のために

私には定期的に通う店がある。
それは年配のご夫妻が営む昔ながらの小さな喫茶店だ。
実はそこには“さっちゃん”という看板猫がいる。
私は“さっちゃん”に会いたくて、この喫茶店に足しげく通う。
もちろん、マスターの淹れるコーヒーも美味しいし、
どこか懐かしさが漂う空間でのんびり過ごす時間も好きだけど、
何より“さっちゃん”の存在が私を癒すのである。

今日もお店に来てみると、“さっちゃん”は出窓でうつらうつらとまどろんでいた。
何度も足を運ぶうちに、
ここが”さっちゃん”の一番のお気に入りだということがわかってきた。
そんな”さっちゃん”の姿を横目で確認したら、
あとは本を読むふりをしながら静かに観察する。
決して、”さっちゃん”に手を出したり、話しかけたりはしない。
それがこのお店の暗黙のルールだからだ。

あ、”さっちゃん”が目を覚ました。
今日はどの席に行くのだろう。
そう、“さっちゃん”はその日の気分でお客さんに挨拶する賢い看板猫なのである。
ドキドキドキドキ……。
今日こそは私の席に来てくれるかなと期待したけど、残念ながら、今回もはずれ。
マスター曰く、「さっちゃんは静かな人が好き」なんだそう。
きっと賢い“さっちゃん”は、私の溢れる好奇心を見透かしちゃっているんだろうなぁ。
私の好奇心の源は、いつか猫と暮らしたいという思いだ。
そんな夢が叶う日まで、私の“さっちゃん”詣では続く。
猫のなにげない行動や仕草から気持ちを理解できるように、
私は”さっちゃん”から多くのことを学ぶのだ。
そして、いつか私と暮らす猫が、
私のそばが一番幸せで快適だと思ってもらえるように――。

ねえ、“さっちゃん”。
猫との暮らしは楽しいよね、きっと。